手や腕のシビレ/筋力低下 Numbness & Weakness of Hands / Arms

手や腕のしびれ・重だるさ・力がいれずらいなどの症状は神経圧迫や血流不良によるもの(頚椎症・手根管/肘部管症候群・胸郭出口症候群)が大半ですが、中には生命に関わる重篤な病気(糖尿病・多発性硬化症・脳腫瘍や血管障害など)が潜んでいる場合があるので注意が必要です。

 

初めにそれらの原因について簡単に説明します。

 

頚椎症(頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症)

中年(50歳)以降の男性に多く、加齢による背骨の変形、椎間板の変性、靱帯の肥厚によって神経を圧迫される状態を頚椎症と呼びます。背骨の中を通る脊髄が圧迫される状態を頚椎症性脊髄症と呼び、首の痛みや手のシビレ、感覚異常、筋力低下などを発症します。脊髄から枝分れした神経根が圧迫される状態状態を頚椎症性神経根症と呼び、こちらも圧迫を受ける部位によって首の痛みや肩・肩甲骨周辺の痛み、手や腕のシビレや感覚異常、筋力低下などを発症します。

 

頚椎椎間板ヘルニア

30~50代に多く、頚椎に慢性的な負荷(不良姿勢やスポーツ、重労働など)が掛かる事で背骨の間の軟骨(椎間板)が変形、突出して頚椎から上肢へ伸びる神経を圧迫して首の痛みや手のシビレ、力がいれずらい(筋力低下)等の症状を発症します頭を動かしたり、姿勢を変えるだけで激痛を生じる事もあり、夜間痛みで寝られなくなったり、日中の仕事に集中できない等日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。

 

手根管症候群

仕事やスポーツ等で手首の曲げ伸ばし動作を繰り返すことで、手根管(筋肉の腱や神経、血管が通るスペース)内に炎症が起きて神経(正中神経)が圧迫されて親指や人差し指、中指に痛みやシビレを発症する病気です。関節リウマチや糖尿病の患者さんにも起こり易い病気です。

 

肘部管症候群

加齢による骨の変形、骨折、スポーツ(野球や柔道など)や仕事などによる肘への負担、筋肉の腱に出来るガングリオン(良性の腫瘤)等が原因で肘の内側を通る神経(尺骨神経)が圧迫されて薬指や小指に痛みやシビレを発症する病気です

 

胸郭出口症候群

人間の鎖骨と肋骨の間にはスペースがあり(胸郭出口)、頚椎から上肢へ伸びる神経や血管が通っています。不良姿勢やなで肩、力仕事に従事したり肩にカバンのを背負う習慣のある方、筋肉が発達したアスリート等、この胸郭出口が狭くなると、神経や血管が圧迫されてつり革につかまったり、髪を洗ったり、洗濯物を干したり、腕を挙げる動作で首、肩、腕、手がしびれたり、だるくなったり、筋力低下(力がいれずらい)等を発症します。

 

糖尿病

糖分過多の食生活や運動不足、遺伝、免疫異常、妊娠によって血中血糖値が高くなることで喉の渇き、頻尿、尿の泡立ち、食欲増進、疲労感、体重減少、視力低下、手足のしびれやむくみ、傷が治りにくい、性欲減退、勃起不全などの症状の他、失明、腎不全、足の壊疽、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こします。

 

多発性硬化症

原因は不明ですが、脳や脊髄といった中枢神経の神経線維が免疫機能の誤作動によって破壊され(脱髄)、正常な神経伝達が出来なくなって様々な症状を引き起こす難病です。視力障害(みにくい・二重に見える)、感覚障害(しびれる)、運動障害(力が入らない・動きにくい・歩きにくい)、排尿障害などを発症します。

 

脳の病気(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血・脳腫瘍)

脳の病気が原因で手にシビレが生じる病気は1)脳梗塞、2)脳出血、3)くも膜下出血、4)脳腫瘍などがあります。脳梗塞は脳内の血管が動脈硬化や血栓によって詰まることで脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり細胞が壊死する病気で、片側の口が動かなくなったり、手が挙げられなくなったり、ろれつがまわらなくなります。脳出血は脳内の血管が動脈硬化や高血圧が原因で破れて漏れ出し脳内に血の塊(血腫)ができることで頭痛や吐き気、手足の麻痺やしびれ、言語障害などを引き起こします。くも膜下出血は脳を覆う3つの膜(硬膜・クモ膜・軟膜)のうち、クモ膜と軟膜の間(くも膜下腔)を流れる血管にコブ(動脈瘤)ができ、それが破れ出血する病気です。突然バットで殴られたような酷い頭痛や吐き気、嘔吐を発症するのが特徴です。手足の麻痺や意識障害が起きる場合もあります。脳腫瘍は脳に腫瘍ができたり、他の部位の癌が転移(肺がん・乳がん・大腸がんなど)して脳に腫瘍ができて脳細胞が圧迫され頭痛や痙攣、手足の麻痺や感覚障害、言語障害、視力・視野の異常、平衡感覚の異常などが起こります脳の病気は命にかかわる病気の可能性もあります。上記の様な症状を発症したら至急、病院で診察を受ける必要があります。

 

手や腕のシビレ/筋力低下の一般的な治療は・・・

頚椎症では安静、鎮痛剤、ビタミン剤、コルセット装具の使用などの保存療法が行われますが、改善が見られない場合は手術が検討されます。頚椎椎間板ヘルニアでは消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、けん引、マッサージ、温熱療法、痛み止め注射、ブロック注射などが行われますが、改善が見られない場合は手術が検討されます。手根管症候群では安静、装具による手首の固定、ステロイド注射が行われますが、改善が見られない場合は手術が検討されます。

肘部管症候群では安静、サポーターやギプス装具による肘の固定、鎮痛薬などの保全療法が行われますが、改善が見られない場合は手術が検討されます。

胸郭出口症候群では、姿勢の改善やリュックや重量物の持ち運びの回避、肩周辺のストレッチや筋トレ、消炎鎮痛薬、筋弛緩薬などの保存療法が行われますが、改善が見られない場合は手術も検討されます。

糖尿病では原因によって異なりますが、通常は食事・運動療法が基本になります。それで改善出来ない場合は糖尿病薬やインスリン療法になります。

多発性硬化症ではステロイド薬、血液浄化療法、MS疾患修飾薬での治療が行われます。

脳梗塞では抗血小板薬や抗凝固薬、脳出血では血圧を下げる薬物療法と手術が行われます。くも膜下出血では薬物療法や手術が行われます。脳腫瘍では抗がん剤治療や放射線治療、手術が行われます。

 

カイロプラクティックでは

カイロプラクティックでは手や腕の感覚や筋力と密接に関わりのある背骨と背骨を通る神経に着目します。

手や腕の感覚(痛み・温度・触覚)は皮膚にある感覚器によって感知され、それは感覚神経を介して脊髄を通って脳へ伝わります。入力された情報を基に脳は適切な判断を下して、その指令が再び脊髄から運動神経を介して筋肉へ伝わります。 

不良姿勢や長時間のパソコン作業、スポーツの反復練習などで背骨に歪みが生じると、背骨を通る神経にも神経障害が起こり、感覚器からの情報が正しく脳へ届かなくなったり、脳からの指令が正しく筋肉へ伝わらなくなります。

それが感覚異常(手のシビレ)や筋力低下(力がはいらない)といった症状を発症します。

カイロプラクティックでは背骨の歪みを整える事で、背骨を通る神経障害を取り除き、手や腕のシビレや筋力低下の根本的な解決を図ります。

 

症例1)左手のシビレ/筋力低下が改善!

 

患者:F.K.さん 40代 女性 スーパー勤務 

主訴:左首の痛みと首から左肩にかけて重だるい。左手全体に痺れがあり、仕事中に時々商品を落としそうになる。

検査結果:視診にて頚椎のストレートネック(頚椎の前方変位)を確認。頚椎の可動域検査にて左回旋、左側屈、伸展方向に制限があり痛みも伴う。左上腕から左手掌に掛けて感覚低下(C5~C8領域)、及び筋力低下が認められた(C5~T1)。右手の握力は15kgに対して、左手の握力は10kgであった。

施術内容:頚椎(C1~7)の前方変位を改善すべく前方から後方(A⇒P)へ、上部胸椎(T1~4)は後方変位が認められた為、後方から前方へ(P⇒A)へ数回に分けて施術を行った。

施術後:頚椎の可動域に於いて、左回旋、左側屈、伸展方向の制限は無くなり、痛みも消失した。左手の感覚、及び筋力も右手と変わらなくなり、左手の握力は15kgまで回復した。(動画参照)

 

左首から左かけての痛み、重だるさ、及び左手のシビレが取れて大変喜ばれた。

仕事以外での下向き姿勢を極力回避するようアドバイスし、念の為一週間後に再検査する事をお伝えして終了した。

一週間後の診察時には左首の痛みと左肩の重だるさ、左手のシビレは7割以上軽減し、仕事中に商品を落とす事はほぼ無くなったとのこと。頚椎の可動域検査では未だ可動域制限が残り、左上肢の感覚低下(C5~C8領域)、及び筋力低下が認められた(C5~T1)。左手の握力は13kgであった。初回と同様の施術を行い、可動域、感覚、筋力のいずれも改善が認められた。それ以降は一回/月程度のメンテナンスケアを継続し、現状を維持している。

 

考察:仕事中(レジ打ち)、下向き姿勢を長時間取っていた事で頚椎に歪みや神経障害が生じて、首の痛みや肩凝り、可動域制限や感覚/筋力低下が起こっていたと推測できる。施術によって頚椎の歪みが整い、神経障害が取り除かれた事で可動域や神経機能が改善したと考えられる。